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第24回 地方出版文化功労賞受賞作

第24回地方出版文化功労賞は、昨年の10月22日から10月27日、鳥取市鳥取県立図書館で開かれた「ブックインとっとり2010」に出品展示された全国の地方出版物(対象約650点)の中から、各地区の推薦委員および一般の来場者による会場での投票により12点を最終候補作として挙げ、12名の審査員が持ち回りで数カ月にわたって審査し、本年6月25日の最終審査会において決定した。
 その結果は以下のとおりです。

 

●第24回地方出版文化功労賞
『日本の国境・いかにこの「呪縛」を解くか』
 編著者  岩下明裕(いわした あきひろ) 

[編著者] 岩下明裕氏。北海道大学スラブ研究センター教授。専門分野−ロシア外交、特にロシアとアジアの国際関係。

[執筆者紹介]
山田吉彦(やまだよしひこ)東海大学海洋学部海洋文明学科教授。長嶋俊介(ながしましゅんすけ)鹿児島大学多島圏研究センター教授。黒岩幸子(くろいわゆきこ)岩手県立大学共通教育センター准教授。原貴美恵(はらきみえ)ウォータールー大学レニソン東アジア研究教授。工藤信彦(くどうのぶひこ)社団法人全国樺太連盟理事。須藤真哉(すどうしんや)北海道新聞東京支社政経部。田村慶子(たむらけいこ)北九州市立大学大学院社会システム研究科教授。古川浩司(ふるかわこうじ)中京大学法学部准教授。
山上博信(やまがみひろのぶ)国立民族学博物館共同研究員。佐藤由紀(さとうゆき)早稲田大学社会科学総合学術院助手。金成浩(きむそんほ)琉球大学法文学部教授。

発行所 北海道大学出版会 
    札幌市北区北9条西8丁目北大構内 電話011(747)2308
発行者 吉田克己
体 裁 247頁,2頁 定価1,680円(本体1,600円)
発 行 2010年1月25日

<選考理由>
タイムリーな本であるが、それを狙った類のものとはまったく違う。
日本の中で国境を意識せざるを得ない3箇所(北方、対馬・竹島、八重山・尖閣)と、そうでない特殊な1箇所(小笠原)を軸に歴史、位置づけ、意識、振興、政策などさまざまな角度から国境に関した考察と情報提供をしている。
論文集的なものであるので若干全体としてのまとまりが弱かったり難しく感じさせるところもあるが、このテーマに関しては偏りや扇動を感じさせる本が多い中で冷静に整理・提案されている厚みのある本である。
したがってサブタイトルの「いかにこの『呪縛』を解くか」に明快な答えを押し付けないで、島嶼国家日本と海国境の特性や、国境地域の国際交流、個別のあるいは連携した「辺境」の活動、スウェーデンとフィンランド間のオーランド諸島問題やロシア・中央アジアの「フィフティ・フィフティ」の考え方による解決例が示される。それが、ともすれば観念的あるいは一方的な主張になりがちな国境についての議論を冷静な分析と議論に導き、また読者の情報・知識が整理されその答えをみずからしっかり考察することを促す。
この1年にここで取り上げられた3箇所で大きな動きがあったことも踏まえ、それが偏狭な意識の高まりに陥らず、よりよい解決を幅広く議論する契機とするためにも今読まれるべき本である。

●第24回地方出版文化功労賞 奨励賞

『刑務所の中の中学校』
著者  角谷 敏夫(すみや としお)

著者略歴 
角谷 敏夫氏。1947年(昭和22年)生まれ。大学を卒業した昭和48年から平成20年まで35年間にわたり、松本市立旭町中学校桐分校教官として教壇に立ち、うち33年間は桐分校の担任を務める。退職後は、各地で講演活動を行っている。
 桐分校について執筆した主なものは、「信濃教育」(昭和56年2月号 2231号)、
「犯罪と非行」(平成元年8月号)、「兵庫教育」(平成13年7月号 605)『法務教官の仕事がわかる本』(法学書院、平成12年刊)を共同執筆。平成元年、日本テレビのドラマ「鉄窓の中の女教師」では原案執筆。平成22年、TBSテレビのドラマ「塀の中の中学校」では企画協力。

発行所 しなのき書房 
    長野県長野市青木島町綱島490−1 電話026(284)7007
発行者 林 佳孝
体 裁 191頁 定価1,470円(本体1,400円)
発 行 2010年8月26日

<選考理由>
日本にただひとつの受刑者を対象とした刑務所の中の公立中学校について、長年法務教官として携わってきた著者により執筆された本である。大変失礼だが、ノンフィクション作家のような名文ではなく、もっと深堀してほしいと思うところもなくはない。それでいて人の心を強く揺さぶる。
刑務所内中学校という制度、歴史、それを支える松本市・旭町中学校、分校の一年と全国の刑務所から希望して入学した生徒のエピソードなどが抑制された筆致で簡潔につづられる。そうした一つ一つの文章に驚きや感動を覚える。
また、改めて「学ぶ」ということの意味と大切さを、あるいは人と人がかかわることの影響を普段思いもよらない深いところから考えさせられる本でもある。
近年報道・ドラマ化もありその存在や意義が知られるようになりつつあるが、いまだ多くの人々に知られていない刑務所の中の学校、松本市立旭町中学校桐分校をその歴史とともに歩んでこられた数少ない方の一人がいつでも手に取れる、読みやすい形で出版されたこと、それによりいつでも「感動」を共有できるようになったことを心から喜びたい。




審査委員
 斎藤 明彦(鳥取県中部県民局長)
 北尾 勲(鳥取県歌人会会長)
 篠村 昭二(教育史研究家)
 岩田 直樹(鳥取県立鳥取西高等学校教諭)
 金澤 瑞子(倉吉市文化団体協議会)
 上田 京子(鳥取短期大学講師)
 松本 薫(作家・NHK文化センター講師)
 松田 暢子(日野町立図書館長)
 森本 良和(鳥取県立図書館長)
 金田 倫子(情報誌『鳥取Now』元編集者)
 岡本 康(元高等学校長)
 田中 玄洋(学生人材バンク代表理事)